止まらない製造業の不正

経営者の学校パートナー中小企業診断士の岡部眞明です。

今年もあと二か月足らずとなってしましました。

異常な暑さと寒さが交互に訪れた10月も、連続して二つの台風が、列島に大きな被害を残して走り去っていきました。

台風に引き込まれた寒気をともなって、木枯らし1号が吹き荒れ、晩秋の装いが増していく時期になりました。

これからは、だんだんと寒さが増して冬に向かっていくこの時期に、もっと寒いニュースが駆け巡っています。

ニュースの源は、神戸製鋼、日産自動車そしてスバルも加わりました。

神戸製鋼は供給するアルミ・銅製品、鋼板など供給先が500社以上に及び各社での品質検査に係る賠償等の経費が膨大になり決算見込みが立たない事態になっています。

日産自動車は、先月末から国内向けの全車種の製造を中止していましたが、製造再開を発表した途端、今日は、検査員の試験での不正が報道されました。

スバルでも無資格検査対応に100億円の追加費用が見込まれると発表しています。

今年を振り返ってみると、私のブログの題材に大企業の不祥事が度々取り上げることになってしまいました。

最初は、フォルクスワーゲンでした。その頃は、日本の製造業は大丈夫、「他山の石」とすべしと思っていましたが、相前後して、旭化成、東芝、神戸製鋼、日立、スバル・・・。

日本の製造業は、大丈夫なのでしょうか?

と考えてみると、フォルクスワーゲンを含めたこれらの企業は全て世界を舞台に戦う世界企業なのです。

世界企業のなかに、我が日本の企業が名を連ねるのは当然なのですが、できればこんな形でない方がよかった。

世界市場で戦う大企業で相次いで起こる不祥事、それも皆企業の存続さえも危うくしかねない深刻な影響を及ぼす事態にまで追い込まれることになるにも関わらず。

「優秀な(であるはずの)企業トップにそのような顛末に思いが至らないはずはない。」はずなのですが・・・。

世界企業の戦場は、「花形商品」をもたらす最先端技術にしのぎを削る一方で、その財源は「金のなる木」である主力商品から供給される資金による構造になっていると言えます。

主力商品の市場は、商品としては成熟しているがゆえにコモデティ化が進み、厳しい価格競争にさらされています。

その製造現場では、当然のようにコストダウン圧力が強くなってきます。

考えてみれば、先にあげた世界的製造業の問題は、製造部門でいえば直接利益を生み出さない「コストセンター」である検査部門における不正であることに気が付きます。

結局、最大の固定費、人件費が最大の削減対象になった結果が今の事態です。

「最先端の生産設備と最先端の生産技術があれば、最先端の製品となる。従って、検査は不要、コストそのものでしかない。」実に論理的です。しかし、その目線の先は、工場の門までしか届いていません。

品質には、工程の設計にあたって目標とする最も高い品質である設計品質、製造にあたり標準となる製造品質、使用にあたり標準となる仕様品質、メーカーが消費者に対し保証する保証品質があります。

当然、設計品質が一番厳しくて、一番低い保証品質が全ての製品で確保されるように製造品質の最低ラインに品質検査基準が設けられていて、使用品質が確保される仕組みになっています。

だから、メーカーは保証品質を確保できる(はずな)のです。

このように、品質管理の視線は、工場の門の更にその先にある顧客が評価する品質(知覚品質)までも届かせるものなのです。

わが日本のものづくりに話を戻すと、江戸末期から黒船来訪に始まった世界デビューは、イタリア、中国との絹糸市場競争において、当時日の出の勢いのアメリカ市場での圧倒的勝利からの紆余曲折を経て、現在の地位を築くに至ります。

それは、アメリカ市場向けに太く改良された製糸と富岡製糸場で知られる上州座繰による生産性の向上であると言われています。
問題があるときこそ、初心に戻れとよく言います。

フォルクスワーゲンはともかく、日本のものづくりの原点は、知覚品質までを見据えた生産工程管理にあると言えるのではないでしょうか。

雑誌「致知」に坂村真民のこんな詩がありました。
期待を込めて紹介します。

しっかりしろ
しんみん
しっかりしろ
しんみん
しっかりしろ
しんみん
しっかりしろ
しんみん
しっかりしろ
しんみん
どこまで書いたら
気がすむか
もう夜が明けるぞ
しっかりしろ
しんみん

(「坂村真民が目指したもの」西澤孝一(坂村真民記念館館長)、横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)による対談【致知】2017.12)

いい詩ですね。自戒を込めて・・・。