小規模企業白書が今年度創刊されました。この白書には、政府による小規模企業に関する調査分析の結果などが掲載されています。事業承継に関して多くのページを割いており、後継者の皆さんにも一読してほしい内容となっています。今回は、「現経営者が事業承継を行うことを躊躇する理由」を取り上げます。
後継者のみなさん、白書って読んだことありますか?。大きな書店に行くと「政府刊行物」のコーナーがあって、「○○白書」というタイトルの本が並んでいます。
白書とは、「政府による公式な調査報告書」のことであり、小規模企業白書は昨年公布された小規模企業振興基本法に基づいた政府が国会に提出した報告書であり、報告内容は、「小規模企業の動向」と「小規模企業施策」です。つまり、小規模企業についての政府の公式な見解を示した本なんですね。
今年度の白書には、事業承継が大きく採り上げられていることから、政府としても事業承継問題を非常に重視していることが伺えます。
では、小規模企業白書(以下、白書と記述します)の中身を見ていきましょう。第1部1章は、小規模企業の実態調査です。その中に下記のグラフがあります。
※クリックすると図が大きくなります。
【出典:小規模企業白書P57 現経営者が事業承継を行うことを躊躇する個人的な要因】
事業承継がうまく進まない理由に、現経営者自身が躊躇していることが見て取れます。最も多い要因は「厳しい経営環境下で事業を引き継ぐことへの躊躇」となっています。
では、このデータを考察してみます。
ここでいう「厳しい経営環境」とは何か?・・・やはり「売上や利益などの業績面の不振」や「借入金が多いことにより財務基盤が弱っている」という2つの理由が大きいでしょう。
つまり、「経営が少しでも楽な状態にしてから引き継いであげたい」という親心があるのですね。
その親心は理解できますが、事業承継全体を考えると大きなリスクがあります。業績向上や財務基盤の強化などは、改善レベルではなく、経営全体の革新が必要であり、長い期間が必要になります。その結果、事業承継の時期が大幅に遅れることになります。事業承継が遅れると、現経営者の加齢による衰えが懸念されますし、後継者の2代目社長へのモチベーション低下も考えられます。
ここは、現経営者による経営革新はなく、後継者が主体となって経営革新を促進し、現経営者はフォロー・支援に回るという体制を敷くのがベストです。
今後会社のかじ取りを行うのは後継者。後継者が主体となって厳しい経営環境を克服できれば、2代目経営者としての自信と社員との信頼関係構築への第一歩となります。
このように一つのデータから多くのことを考察できます。次回も小規模企業白書から事業承継を考察します。
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