後継者の学校パートナー、中小企業診断士の岡部眞明です。
「らりるれろのまほう」という本を読みました。20篇ほどの詩が収められている小さな詩集です。著者は、1992年生まれといいますから今年で24歳の溝呂木梨穂さんという女性です。
梨穂さんは、生後すぐに脳に酸素が行かないというトラブルで、脳に重度の障がいをおってしまい、体の自由と言葉を失ってしまいます。2012年5月20日まで。
この日国学院大学の柴田保之教授と出会います。教授は、重度・重傷障がい児の教育について研究しているそうです。この先生(の通訳?)を通して、彼女の中にある言葉が文字になりました。
彼女の詩を、ほんの一部だけ紹介します。
人間として生まれて生きて来たけれど
私は誰にも振り返られることもなく
理想だけを糧にして生きてきた
夜の暗闇の中でも
人間としての理想は決して捨てずに
ただ未来だけを信じて生きてきた・・・
(「緑の声と光」より抜粋)
理想の未来に向かって
私はこの場所をそろそろ旅立つ日が来ようだ
しかし私は決して忘れないこの暗闇の世界を・・・
(「暗闇の世界から」より抜粋)
彼女が、20数年間紡いできた言葉とその世界は、あくまで透徹して力強い。彼女のような重度の障がいを持つ人たちの中にこんな世界があるなんて、恥ずかしいことだけれど今まで気が付きませんでした。
普通に考えれば、当たり前のことなんです、同じように感じ考えていることは。むしろ、耳と目と頭(心)だけで他者との関係を構築しなければならない彼女にとって、内面世界が研ぎ澄まされていくことも。
今回、彼女の本を知り、彼女の世界を垣間見ることができて、「世の中もまんざら捨てたもんじゃないなぁ」と、何故か気分がよくなりました。
差別するつもりなどまったくないのですが、気の毒な人という障がいを持つ人に対する先入観が私の世界も狭めていたのです。
私たちの思考のプロセスは、一定の考え方や習慣を前提になりがちです。それらが先入観となって時として誤った判断をもたらすことになります。思考プロセスを先入観から解き放ちゼロベースで考えることの大切さに、この本を読んで学ぶことができました。
また、コミュニケーションとは、人の内面を引き出す大きな力であることを改めて確認することもできました。
梨穂さんの現在は、小さいころからお母さんの愛情をいっぱい受けて来たからであることは、もちろんです。梨穂さんがお母さんと柴田先生の支えを受けて、これからも素晴らしい詩を作り続けてほしいと思います。また、もっと多くの梨穂さんにも。
そうすれば、世の中もっとまんざら捨てたもんじゃなくなるかもしれません。
愛情をいっぱい受けるといえば、事業承継においても「先代の愛情をいっぱい受けた」大切な従業員を引き継いでいくわけですから、この詩を噛み締めて「明るみ」に向かっていかなければなりませんね。
(出典「こころの詩集 らりるれろのまほう」溝呂木梨穂(ダーツ出版))