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小規模企業白書2015年版に見る事業承継 第2回

永井さん後継者の学校パートナーで中小企業診断士の永井貴之です。

中小企業庁の「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」より、後継者候補の有無と廃業について考えてみます。

後継者候補がいる場合は、後継者候補と現経営者が承継に関する本音の話し合いを持って、明確な合意形成を図ることが事業承継への第一歩です。

廃業には費用も手間もかかります。親族内承継・親族外承継以外には、M&A(企業の合併・買収)や第二創業等の可能性があります。廃業と決めてしまう前に、それらの可能性の検討をお勧めします。

 

後継者の皆さんこんにちは。後継者の学校パートナーの永井貴之です。

今回は「小規模企業白書2015に見る事業承継」の第2回として、後継者の確保について考えてみます。

ブログ画像(永井)2015.11.01提出

※画像をクリックすると拡大します。

【出典:小規模企業白書2015年版】

 

まず、数字を整理しておきます。

■後継者候補の有無

後継者候補がいる           約40%

後継者候補がいない          約40%

廃業するので、後継者は不要      約20%

■現経営者の考え

事業承継を考えている         約50%

事業承継を考えていない        約30%

事業承継しない(自分の代で廃業する) 約20%

 

では、後継者候補の有無を考えてみましょう。後継者候補がいる小規模企業事業者は約4割です。

ここで、2つの問いを立てることができます。

Q1:これらの現社長の考えは、後継者候補に伝わっているか? Q2:後継者候補は現社長の考えを理解して納得しているだろうか?

ただし、「後継者」ではなく「後継者候補」となっていることに注意が必要です。「長男に継いでほしい」などと考えている現経営者が4割あるということですね。あくまで候補ですので、事業承継を進めるには「後継者候補」を「後継者」にしなければなりません。特に親子間の承継の場合は、「継ぐ・継がない」の腹を割った話し合いをしていないケースが多いものです。

 

現経営者と後継者候補との合意形成は事業承継への第一歩です。現経営者は「継いでほしい」という意思を伝え、後継者候補は「継ぐならこういう会社にしたい」という対話による合意形成が必要です。

 

次に、廃業を考えてみましょう。

廃業とは、「理由に関わらず、経営をやめてしまうこと」です。後継者不在により自発的に会社をたたむことも廃業ですし、資金繰り悪化により事業が行き詰まり、法的整理するのことも廃業です。つまり、「廃業=事業の行き詰まり」ではないことに要注意です。

 

廃業と言葉でいえば簡単ですが、費用も手間もかかります。法的手続きを行政書士などに依頼すれば費用がかかりますし、設備や在庫の処分をしなければなりません。何らかの解約金や違約金もかかる場合もあるでしょう。

 

廃業により失うものがあります。雇用です。年間廃業社数約29万社のうち約7万社は「後継者がいない」ことを理由とする廃業であると推定され、これだけの雇用が完全に喪失された場合を仮定すると、失われる従業員の雇用は毎年約20万人~35万人に上ると推定されています(平成18年度版中小企業白書より)。

 

親族への事業承継が不可能ならば、M&A(第三者への売却)や第二創業という可能性があります。第二創業とは、後継者が先代から事業を引き継いだ場合などに、コア技術等の強みを活かして業態転換や新事業・新分野に進出することです。M&Aについては、多くの人が「当社を買う会社なんて無いよ」と考えてしまいがちですが、中小企業においてもM&Aの市場が整備され、成功事例が増えつつあります。財務状況が悪い場合でもM&Aが成立する可能性は大いにあると思ってください。

 

廃業には費用もかかりますし、雇用という大きなものを失います。価値を日々産み出している事業を一部でも残す(M&A)、あるいは姿を変えて残す(第二創業)という可能性を廃業を決断する前に、探ってください。ただし、「廃業はダメ」という意味ではありません。親族や親族外(社員)への承継以外にも選択肢があることを、後継者候補の皆様には知っておいていただきたいですね。

 

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小規模企業白書2015年版に見る事業承継 第1回

永井さん後継者の学校パートナーで中小企業診断士の永井貴之です。

小規模企業白書が今年度創刊されました。この白書には、政府による小規模企業に関する調査分析の結果などが掲載されています。事業承継に関して多くのページを割いており、後継者の皆さんにも一読してほしい内容となっています。今回は、「現経営者が事業承継を行うことを躊躇する理由」を取り上げます。

 

後継者のみなさん、白書って読んだことありますか?。大きな書店に行くと「政府刊行物」のコーナーがあって、「○○白書」というタイトルの本が並んでいます。

白書とは、「政府による公式な調査報告書」のことであり、小規模企業白書は昨年公布された小規模企業振興基本法に基づいた政府が国会に提出した報告書であり、報告内容は、「小規模企業の動向」と「小規模企業施策」です。つまり、小規模企業についての政府の公式な見解を示した本なんですね。

今年度の白書には、事業承継が大きく採り上げられていることから、政府としても事業承継問題を非常に重視していることが伺えます。

では、小規模企業白書(以下、白書と記述します)の中身を見ていきましょう。第1部1章は、小規模企業の実態調査です。その中に下記のグラフがあります。

※クリックすると図が大きくなります。

ブログ画像(永井)2014.09.21提出

【出典:小規模企業白書P57 現経営者が事業承継を行うことを躊躇する個人的な要因】

 

事業承継がうまく進まない理由に、現経営者自身が躊躇していることが見て取れます。最も多い要因は「厳しい経営環境下で事業を引き継ぐことへの躊躇」となっています。

では、このデータを考察してみます。

ここでいう「厳しい経営環境」とは何か?・・・やはり「売上や利益などの業績面の不振」や「借入金が多いことにより財務基盤が弱っている」という2つの理由が大きいでしょう。

つまり、「経営が少しでも楽な状態にしてから引き継いであげたい」という親心があるのですね。

その親心は理解できますが、事業承継全体を考えると大きなリスクがあります。業績向上や財務基盤の強化などは、改善レベルではなく、経営全体の革新が必要であり、長い期間が必要になります。その結果、事業承継の時期が大幅に遅れることになります。事業承継が遅れると、現経営者の加齢による衰えが懸念されますし、後継者の2代目社長へのモチベーション低下も考えられます。

ここは、現経営者による経営革新はなく、後継者が主体となって経営革新を促進し、現経営者はフォロー・支援に回るという体制を敷くのがベストです。

今後会社のかじ取りを行うのは後継者。後継者が主体となって厳しい経営環境を克服できれば、2代目経営者としての自信と社員との信頼関係構築への第一歩となります。

 

このように一つのデータから多くのことを考察できます。次回も小規模企業白書から事業承継を考察します。

 

後継者の学校
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事業承継への第一歩は自社の分析・理解

後継者の学校パートナーの永井貴之です。永井さん

後継者となることは、今回っている会社を舵取りしていくこと。

まず、会社の実態を把握・理解しましょう。

はじめに

後継者&後継者候補のみなさん、はじめまして。中小企業診断士の永井貴之と申します。今回は自己紹介とともに、私の事業承継への考え方を簡単に紹介します。

私の経歴

私は大学卒業後、情報システムの開発・運用業務に従事しておりました。就職した当時はバブル景気の真っ最中でシステム業界は大型開発案件が多数動き、猛烈なスケジュールをこなす日々でした。そのような状況のなか、「自分はこのままシステムエンジニアを続けていくのか?」という疑問のもと、純粋に自己啓発のために中小企業診断士の受験勉強を始め、平成14年度に合格。平成20年度に「創業とIT支援」をキーワードに独立・開業しました。

多くの社長さんから、このような言葉をよく聞きました。「後継者がいない」、「事業承継したいがどうしていいか解らない」。多くの社長さんが事業承継という問題を抱えており、2代目経営者の育成に悩まれています。日本の中小企業は独自技術を持ち、雇用や経済全体を支えています。私は独自技術を次世代につないでいくことの意義に気づき、事業承継と後継者育成支援を仕事の柱とすることを決意しました。

私の事業承継に対する考え方

事業承継には、経営の承継、事業用資産の承継など様々な側面があります。後継者となることは、会社を舵取りしてくことに他なりません。その舵取りをするには、会社の実態を把握しなければなりません。「そんなの当然だ」と思われるかもしれませんが、多くの後継者が、会社の実態を分析・理解せずに後継社長となっています。

まず、会社の実態を分析・理解しましょう。分析・理解は以下の4本柱で行うことが大切です。

① 会社の沿革~創業から現在までの歴史

② 事業の仕組み~製品・サービスの価値や顧客のプロフィールなど

③ 財務状況~そもそも儲かっているのか、お金の流れはどうなっているのかなど

③ 統治基盤~株主は誰か、法令を遵守しているかなど

4本柱それぞれに分析・理解のポイントや手順があります。このブログで紹介していきますので、ぜひお読みいただき、実践していただけば幸いです。
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