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後継者にまつわる小説あれこれ(その3)

後継者の学校パートナーで司法書士の木村貴裕です。

小説は気軽に読めて、でも何か気づきを得たり、力がわいてくることってありますよね。

ほんの少しでも何か感じてもらえそうなものをこれから少しずつ紹介したいと思います。

後継者の学校パートナーブログですので、もちろん後継者や事業承継に関するものを。

 

後継者の学校パートナーで司法書士の木村貴裕です。

私は通勤時間をもっぱら読書にあてております。

地下鉄なので外の景色を眺めても面白くもなんともないという理由もありますが。

 

経営書ではなくあまり肩のこらない小説ばかりなのですが、結構事業承継にからむ話もあります。

後継者や後継者候補の方に何か少しでも感じてもらえるものがあればと思い、今まで読んだ中から、後継者や事業承継に関係するものを何冊か紹介します。

今回紹介するのは、

 

「プライド」真山仁 著(新潮社)

 

プライド=誇り を題材にした6編と掌編からなる短編集で、

その中でも今回は表題作となった、プライドを取り上げます。

 

著者はハゲタカシリーズやマグマなどでご存じの方も多いと思います。

私の中ではちょっと気持ちを上げたいときに読む著者の1人です。

 

まもなく創業100年を迎えるという洋菓子メーカーで、期限切れ食材使用などの内部告発がマスコミに流されたところから話は始まります。

 

創業者一族である現社長含む後継者たちは、残念ながら余り良い描かれかたをされていません。

特に社長は、「御曹司」「理想を掲げることには熱心だが現場の声を聞く耳を持たない」と初っぱなから悪印象で登場します。

 

余談ですが、「御曹司」って言葉は、恋愛小説では甘い響きを持ちますが、ビジネス小説では好印象を抱きませんよね。

世間の嫉みがあるのかなぁ。

後継者候補の皆さんは、この言葉に複雑な感情をお持ちかもしれませんね。

 

小説の現社長も部下から見ると、アメリカのビジネススクールで学んだ現場軽視のコストカッターとなります。

裏から読むというか斜に構えた読み方をすると、実際は会社の生き残りをかけ必死だっただけかもしれません。

 

(小説はあまり裏読みは好きではないので、これ以上掘り下げませんが、もし身近に後継者がいらっしゃったらその言動は少し立場を変えて見ても良いと思います。)

 

小説の従業員たちは、創業者の熱い想い(言い換えるなら企業理念)とは反する行動を強いられることが多く疲弊していきます。

誇りを傷つけられることから、信頼関係もゆらぎ、社内風土も悪くなっていく。

 

著者のあとがきを引用すると、

「胸の内で強く思い、黙って行動している時、”誇り”ほど人を強くする情熱はない。」

とあります。

「ところが、ひとたびこの言葉を口にすると、急に怪しくなる。」

とも続くのですが。

 

事業承継の場面で後継者は、特に何か新たなことに取り組むときには、感謝を忘れ従来を全否定し、会社の存在意義に反したり、従業員の誇りを傷つけていないか注意しなければなりません。

 

前経営者の否定、従来からの仕事のやり方の否定は、そのまま従業員そのものへの否定と受け取られ、大きく信頼関係を損ねる恐れがあります。

 

今までの話は横に置いておいて(他者でなく自分を全否定は構わないでしょう)、プライドは、著者の思いがはっきりと伝わってくる作品ばかりです。

一度手に取ってみて下さい。

 

この話が少しでも何かのきっかけになれば幸いです。

 

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